現在、私自身が携わっているプロジェクトの一つに、脊髄完全損傷からの回復というものがあります。これは、ある種の特殊プロジェクトではあるのですが、下半身を全く動かすことのできない人が立ち上がって、歩き出すことを目的としています。

この方は、以前再生医療などを試験的に受ける話もあったようですが、「完全損傷」という状況だったので、見込みが低いと考えられ、医療機関から拒否されてしまった経緯があります。私自身が、医療機関と連携したプロジェクトを行ってきたからこそよくわかる部分なのですが、「現在利用可能な医療」と「研究レベルで開発されている医療」においては、大きな差があります。これは、研究レベルで効果が見られても、現場レベルに落とし込むには大きなハードルがあることを意味しています。

例えば、今回のコロナなどでは特別措置が取られてワクチンが承認されていますが、平時においては検証に多大な時間とお金が必要になります。研究レベルで例えばガン治療などに効果が見られても、「全ての人がその治療を受ければ効果があり、副作用もどんなことになるか分かっている」と言える状況を達成するのは容易ではありません。

よって、私が取り組んでいるプロジェクトは、この方が回復するかどうかというあくまでケーススタディーになりますが、とにかく様々な方法を試して希望につなげていくよう尽力しています。

原理

神経経路が断裂したことが原因で動くことができなくなった場合、2段階のプロセスがあります。

1つ目は、神経細胞自体の再生、回復になります。これは再生医療の分野で、細胞の培養が必要になります。細胞の培養に関しては、近年非常に高い進歩が見られていて、近いうちに「老化」という現象を食い止めることが可能になるかもしれません。あるいは研究レベル、さらにインフォーマルなパイロット試験レベルにおいては、そのようなことは既に行われていたとしても、不思議はありません。また、ファイザーのワクチンを介して一躍有名になったメッセンジャー・RNA(m‐RNA)の介入も体の細胞の作り方の設計図への介入になるので、可能性はあります。

しかし、仮に神経細胞を繋いだとしても動けるようになる可能性が少ないと言われています。

そこで大切になるのが、2つ目になります。

つまり神経伝達を促進させる作業になります。電線に例えるのであれば、途中で電線が切れれば、そこを繋ぐのが大切になります。しかし、仮にそこが繋がっても、そこに電気を流し始めないと電線としての役割は果たしません。

既に何度かお話させて頂いていることですが、神経経路には電気が流れます。この電気が筋肉を収縮させて動きとなっています。つまり、電気を流す作業が大切になり、最終的には自分の意思で電気を流すことができるようになれば、動けるようになっているはずです。

どうすれば、体の神経経路に電気が流れるのか?

ここからは、まさにこのプロジェクトの仮説になるのですが、まず初めに電気を流すことが大切かと思います。つまり、自分の意思で電気を生み出して流していく前に、外側から電気を流す必要があるかと思います。

これには以前もお話したEMSやTENSが有効になる可能性があります。問題は、どこに電気を流すか?ということになります。

第一段階としては、脊髄から離れた部分に電気を流し、それを感覚のある上半身で感じ取るトレーニングが必要になります。

第二段階としては、損傷部分に近づけて電気を流していく作業になります。

この場合は、損傷部分を挟んで電気を流し、損傷部分がそこを繋ぐことができるかどうかを試します。

第三段階は、損傷部分に直接電気を流すことも必要になります。これは、「神経経路に電気を流す」という目的に加えて、神経経路自体の再生にも役立つ可能性があるのでは?と期待しています。簡単に言えば、電線が完全にできていない状態で電気を流せば、切れている部分は放電状態で電気は繋がるかもしれません。そうなれば、体が電気を繋ぐための回路を作るように指令をする可能性があります。

第四段階としては、遠隔からの電気刺激になります。遠隔というのは、例を挙げるのであれば、足つぼによる反射区のようなイメージです。足の一部を押すと内臓に役立つと考えられたりしているので、例えば足つぼに電気を流せば、上半身の一部を刺激することが可能かもしれません。

自分の意思で思った通りの行動を

そして、最後にアクティブ・エクソスケルトンの活用によって、自分自身が生み出した電気を基に求める動きを行うトレーニングに入ります。これを行う段階で、自分自身の意思で微弱で良いので電気を生み出す能力が要されます。これは、日本のサイバーダイン社が持つHALというシステムが世界的に見ても最も画期的なデバイスになります。

これらを組み合わせることで、体が動かなくなった人が、再度動き出せる可能性が生まれてきます。

もちろん損傷の度合いなどによって、回復が可能かどうかは決まってくる部分もありますが、ある程度システマチックに動きを回復させるプロセスを確立させることが目標になります。

ISEALインソールは、歩行やジョギング時の疲労を軽減させる効果があります。また、歩いている時にケガをしないように足首の動きや足圧のコントロールを最適化しています。ゆくゆくは、これに電気を流して足ツボを刺激できるような機能も追加していきたく思っています。

www.iseal-insole.net/jp

また、科学について、YouTube番組を作りました。こちらは、ゴンちゃんとミクロちゃんというキャラクターを使って様々な最先端科学をできるだけ分かりやすく、面白く解説しています。この話は、夢の科学と秘密についてです!ぜひ、一度ご覧ください!

文責:Dr Hanatsu Naganos

Yang, B., Zhang, F., Cheng, F., Ying, L., Wang, C et al. 2020. Strategies and prospects of effective neural circuits reconstruction after spinal cord injury. Cell Death and Disease, 11: 439.

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