運動をしていて、急にエネルギーが切れて動けなくなった経験のある人も居るかもしれません。これは、まるでガソリンが全て枯渇して車が動かなくなったかのように、急に力が入らなくなってきて、いくら「気合い」を入れてもどうにもならない状況が生まれることもあります。これは、息切れがして心肺機能的に限界を迎えているのとは異なり、体に力が入らなくなる状況です。

特に、何かしらの競技会などであれば致命的な状態であり、100m走などのような短時間の競技であればどうにもなりませんし、中長期的な競技であれば即座に対応が必要となります。(中長期の方が影響が大きいと考えられます)

こうしたガス欠状態に陥る原因は様々ですが、ここでは炭水化物の果たす役割についてお話します。特に、最近では炭水化物を食べないダイエット方法などが流行っていたりもするので、競技パフォーマンスの観点から、こうした体の状態がどのような影響を及ぼすかは理解しておく必要があります。

(余談ですが…かくいう私も体重制限の厳しい個人競技を行っていた時に、こうした状況に陥ったことは度々あります。当時は、体脂肪率を5-6%まで下げておくことを考えていて、糖質や脂質は極限まで落としてタンパク質の摂取と過度な有酸素運動を毎日行っていました。しかし、その精で競技会の当日に力が入らず不本意な結果に終わったことも何回かあります。今この炭水化物の話を書きながら、当時の状況を思い返しています。。。)

健康を維持するのに推奨されているエネルギー摂取における注意点

一般的なガイドラインによると、炭水化物によるエネルギー摂取は、総エネルギー摂取量の55%~60%にすると良いと言われています。脂肪によるエネルギー摂取は30%以内(飽和脂肪の割合は10%以内)、砂糖は15%以内、コレステロールは1日300㎎以内、塩分は1日3g以内、が一つの目安になります。

(これは、アメリカで使われているガイドラインの一つであり、運動の頻度や年齢、人種、生活習慣などにより所説あります。)

それでは、炭水化物を抜いていくことが、どのようにガス欠状態を引き起こすのでしょうか?

筋肉の中のグリコーゲン

この話を考えていくうえで大切なことは、炭水化物はグリコーゲンという形で筋肉に貯蔵されていくということです。当然ですが、これは炭水化物をしっかりと食べているかによって変化します。ある研究によると、1日2800kcal摂取する前提で、「炭水化物少な目=タンパク質と脂質」、「バランスが取れている」、「炭水化物多め(2300kcalが炭水化物による)」の3つの種類の食事をしたところ、大腿四頭筋群に貯蔵されているグリコーゲンは筋肉100gにおいて、それぞれ0.63、1.75、3.31となり、最大酸素摂取量の75%程度の運動(中強度)においてパフォーマンスが継続できた時間は、それぞれ57分、114分、167分であったと報告されています。

つまり、筋肉の中のグリコーゲンが、中強度以上の運動においてパフォーマンスを発揮できる時間に関連していることが分かります。こうした運動を行う際には、食事などにも気をつかって筋肉の中のグリコーゲンを最適に整える必要があります。

スーパーコンペンセーション

筋肉中のグリコーゲンを蓄える手法として、いくつかの原則を理解する必要があります。

  • まず初めに、「強度の高い運動をある程度長く行って、筋肉に蓄えられているグリコーゲンを使い果たす」
  • 次に、「脂質とタンパク質を中心の食事を3日行い、トレーニングも継続的に行う」
  • 競技を行う3日前から炭水化物中心(90%程度)の食事に切り替え、運動を行わない。

しかし、この方法はトップアスリートなどの、専属トレーナーが居る状態を除くと実践的とは言えない可能性があります。そこで、より実現可能な方法が提案されました。

  • まず初めに、「運動の時間を40分位に下げて、エネルギー摂取の50%を炭水化物にした食事に切り替える」
  • その後の2日間は「20分の運動と、70%の炭水化物」
  • 競技の前日は「運動を行わず70%の炭水化物」

この方法で競技時における筋肉の中のグリコーゲンのレベルは高いままを維持できると言われています。こちらの方が、4日間で行えるというメリットがあるため、プロレベルの話ではなくても実現可能になります。

コツとしては、運動後できるだけすぐに炭水化物を摂取することです。これは、激しい運動を行った後はグリコーゲンの精製や貯蔵を行いやすい状態になっているからです。また、最初の炭水化物接種から2時間ごとに3回行うことが重要になります。

パフォーマンス直前~パフォーマンス中

競技がある場合は、1~4時間前に体重1㎏につき1~5gの炭水化物を摂取するようにしましょう。その際は、消化の良い固形物がおすすめです。しかし、1時間前になった場合は、液体での摂取が有効です。パフォーマンス中も摂取が可能である場合は、液体での摂取がおすすめです。運動中の炭水化物の摂取は、筋肉の中のグリコーゲンではなく、肝臓のグリコーゲンとして蓄えられ、パフォーマンスを落とさないためには重要になります。

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文責:Dr Hanatsu Naganos

Powers, SK., Howley, ET. 2004. Exercise Physiology. Theory and Application to Fitness and Performance, 5th Edition. McGrawHill, Higher Education, NY.

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