人生100年時代に突入するようになりつつある現代ですが、「健康寿命」という言葉を聞いたことのある人も多いかと思います。これは、文字通り健康に活動できる寿命ということになります。つまり、100歳まで生きても、80歳から寝たきり状態が続く場合と、82歳まで生きて、82年間ある程度自立した生活を送ることができる場合を比較した場合、健康寿命という観点からは、後者の方が長生きしたと言えます。これからの超高齢社会において、寿命と健康寿命のギャップを狭めていくことが、着目するべきこととなります。心臓のみが動いていて、他の全ての機能を失った状態が続く状態を維持することの是非に関しては、安楽死などの議論から非常に難しく、答えが出にくい、ある意味タブー視された問題ではあるものの、「寿命と健康寿命のギャップを縮める。その方法として、健康寿命を延伸する。」という考え方は、特に問題がないかと思います。

健康寿命延伸に必要なことは、大雑把に言えば「身体機能と認知機能」になります。その中で身体機能に関して話をした場合、ベッドから起き上がる能力と歩く能力は、基礎能力として重要になります。それでは、これらができなくなる理由にはどういったものがあるでしょうか?

神経伝達の問題

動きができなくなる理由の一つとして、筋力不足があります。例えば、転倒による怪我をして車椅子生活が長くなった人の場合は、自力で立ち上がることができなくなることが多々あります。こうした状況に直面した時、本人も周りの家族も絶望感を感じることと思いますが、筋力不足が原因の場合は、筋力トレーニングをすれば、再び立ち上がり歩き出すことが可能になるケースが少なくありません。以前の記事でも紹介した通り、EMSという電気を流して筋肉を刺激する方法などを活用していけば、実際に動くことができないほど筋力が低下していても、回復する可能性はあります。

今回のトピックは、第二の可能性。神経伝達能力の欠如についてです。

仮に筋肉があったとしても、中枢神経からその筋肉を活用する信号を届けることができなかった場合、その筋肉を収縮することはできなくなります。基本的には、脳や脊髄などが筋肉に電気を信号として送り、その電気が筋肉を収縮させます。何かしらの理由で、この電気信号が筋肉まで届かない場合、体を動かす能力は無くなります。つまり、健康寿命延伸を考えた際には、筋力の問題に加えて、この神経伝達性も考慮する必要があります。

車椅子ユーザー・寝たきりの状態と神経伝達性

何らかの神経難病や怪我などにより、神経伝達性を失った場合、体の一部を動かすことができなくなります。今まではこうした状態は、治療不可能と考えられてきたケースが多かったのですが、現代の最先端健康科学に則れば、回復も理論上不可能とは言えない状況まで来ています。その最先端をいく考え方は、再生医療です。自身の細胞を培養し、神経を繋ぐことが外科的に可能になれば、神経が切れても元のように繋ぐことができる可能性が飛躍的に上がることが期待されます。

神経が切れているため、筋肉まで電気信号が届かないというのは、電線が途中で切れているため、目的地まで電気が届かないことと似ています。つまり、以前紹介したEMS・TENSというテクノロジーを用いれば、筋肉や神経に電気を流すことができます。神経が切れた部分は、中枢神経からの命令として送られる電気信号は流れなくても、EMS・TENSを利用した電気なら流れる可能性もあります。これを流すことで、切れた神経が再度繋がる可能性が期待されます。

また、他の方法としては、HALと言うロボットテクノロジーが有効になる可能性があります。これは、神経が切れている直前まで届いている電気信号を拾い、その人がどのような動きをしたいのかを理解したうえで、装着しているロボットが代わりにその動きを再現してくれるというシステムになります。これを続けていけば、自分の意思通りの動きが再現され続けていくことで、その動きを再現するための神経が再生されるという仕組みになっています。

超音波による神経経路の再結合

シナプスの結合を促進する方法は、上述した通り様々な可能性がありますが、さらに直接的に効果があると考えられているものに、低周波の超音波があります。これが、シナプスの尾の部分(Axon)を成長させるトリガーになる可能性があると考えられています。体の中の似た仕組みとしては、例えば軟骨再生などが上げられます。軟骨再生に必要な材料があっても、トリガーを与えないと再生が始まりません。そのためには、例えば軽い振動などが役立つ可能性があると言われています。このように、神経再生に関しては、低周波の超音波が有効である可能性が高いと考えれています。

ISEALインソールは、歩行機能を改善させて、様々な怪我を予防する効果があります。これからの自分の開発としては、スマートシューズにISEALインソールを導入することを考えています。こちらの開発も進めば、随時アップデートさせて頂きます。正しい歩き方をするためにも、ISEALインソールのご活用をおすすめします。

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また、健康や物理学に関する科学について、YouTube番組を作りました。こちらは、ゴンちゃんとミクロちゃんというキャラクターを使って様々な最先端科学をできるだけ分かりやすく、面白く解説しています。EMSのことなども話しているので、科学トピックを大雑把に勉強したい人達にはおすすめの番組です!

文責:Dr Hanatsu Nagano

Daeschler, SC., Harhaus, L., Shoenle, P., Boecker, A., Kneser, U., Bergmeister, KD. 2018. Ultrasound and shock-wave stimulation to promote axonal regeneration following nerve surgery: a systematic review and meta-analysis of preclinical studies. Scientific Reports, 8: 3168.

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