今回紹介する情報は、日本の埼玉県鴻巣市において行った歩行研究における結果を基にしています。

内容は、ある歩行能力の測定会に参加した市民を50代、60代、70代に分けて、それぞれのつまずきのリスクを検証しつつ、年代によってこのリスクがどのようにコントロールできるかを考察したものとなります。

以前に何度か紹介した話にはなりますが、つまずきは、転倒の最大の原因となります。

つま先が地面にある障害物と接触を起こし、バランスを崩すことが「つまずき」の定義となるので、つま先の地面からの距離を維持することが、転倒予防において非常に大切になります。バイオメカニクスの観点から、Minimum Foot Clearance (MFC)と呼ばれる地点のつま先の垂直距離を高めることが、つまずきによる転倒を予防するうえでの最重要事項の一つとなります。(図1)

図1 MFCの定義、足が地面から離れている最中(遊脚期=Swing Phase)の中期で地面につま先が近づく地点(図中MFC=Minimum Foot Clearance )を増加させることが、つまずき予防において必須。

この中で、まず分かったことは、50代と60代以上の間にMFCの高さの差が見られたことです。つまり、60代以降は、つま先が地面や障害物と接触する危険性が高くなる可能性があります。

もう一つ大切な発見は、70代になると、一貫したMFCのコントロールが難しくなるということです。これはどういうことかと言うと、歩くたびにMFCの高さが変化するのか?それとも何歩歩いても同じ高さのMFCを維持できるかということを表します。学術的には、変動性などと言われ、一番簡単な方法だと標準偏差で表すことができます。

つま先のコントロールはどうすればいいの?年代別、安全なMFCのコントロールの仕方

まず、年代関係なく重要なのは、前脛骨筋と言われる脛の前の筋肉を効果的に活用することになります。これは、MFCを上げるのに絶対的に大切なこととなります。(図2)

左右対称な歩行ができると、自然とMFCが高くなりつまずきにくくなる可能性があります。

年代別に異なるMFCへの影響は、

50代:歩隔の左右対称性(まっすぐ歩けているかどうかということです、図3参照)

60代:MFCの左右対称性

70代:足のかかと着地の角度の左右対称性(図3参照)

次に、先述したMFCの変動性を下げる方法についても年代別に解説します。復習になりますが、一日1万歩歩いて、基本的にはある程度の高さをMFCが維持した状態を続けることが重要になります。つまり、毎ステップ同じMFCの高さを維持する能力が極めて大切になります。これを達成するのも年代別によって、歩き方において注意するべき点は異なります。

50代:歩幅の変動性を下げる

60代:歩幅を長くする、歩幅の変動性を下げる、かかと着地の角度を上げる

70代:両足立脚時間(歩いている時に両足が地面についている時間)を長くする、かかと着地の角度の左右差を無くし対称にする

そして、最後にMFCの左右差を無くし対称にするためには、

50代:歩幅の左右対称性、両足立脚時間の左右対称性(左右のステップのリズムと大きな関係がある)

60代:両足立脚時間の左右対称性(左右のステップのリズムと大きな関係がある)、歩隔の左右対称性(まっすぐ歩けるか)

70代:歩幅の左右対称性

以上、50代、60代、70代と年代別につまずきによる転倒のリスクのコントロールの仕方が変化することが分かりました。歩くということは、一か所だけを修正すれば良いものではなく、一つを修正すると他の場所に影響を及ぼす可能性があります。よって、総合的な歩行トレーニングが重要となります。まとめとしては、一貫した歩き方を続けながら、左右対称性を維持できれば、自然とつまずきによる転倒のリスクが下がる可能性があるということです。さらには、前脛骨筋などを効果的にトレーニングしながら、MFCの高さを上昇させる方法も考えていく必要があります。また、自粛期間の長期化により、例えば50代の人であれば、60代の身体的状態に近い可能性があります。よって、こうしたことも考慮しながら、春先のウォーキングを楽しんで頂きたく思います。

最後になりますが、埼玉県鴻巣市と参加して頂いた市民の方々に厚くお礼申し上げます。

この研究成果が、埼玉県の取り組みとして、同カテゴリーにおいて一番の賞を取れたことも嬉しく思っております!

ISEALインソールは、MFCを向上させて、つまずきのリスクを下げることが一番のイノベーションとなります。日本の統合失調症などの入院患者や一般層などでクリニカルテストを行い、実際に転倒リスクが下がることが証明されています。また、バイオメカニクスの観点からも、MFCが上昇したことが確認されています。関節炎にも役立つので、ぜひウォーキングにご活用ください!

www.iseal-insole.net/jp

また、健康や物理学に関する科学について、YouTube番組を作りました。こちらは、ゴンちゃんとミクロちゃんというキャラクターを使って様々な最先端科学をできるだけ分かりやすく、面白く解説しています。私自身、この2人(匹?)と会うのが楽しみな日々です(笑)ぜひ、ご覧いただけると嬉しいです!

文責:Dr Hanatsu Nagano

Nagano, H., Sparrow, W.A., Mizukami, K. et al. A cross-sectional study of foot-ground clearance in healthy community dwelling Japanese cohorts aged 50, 60 and 70 years. BMC Geriatr 21, 166 (2021). https://doi.org/10.1186/s12877-021-02117-w

Nagano H, Begg R. Shoe-insole technology for injury prevention in walking. Sensors. 2018;8(5):18.

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