ワクチンが開発されて、世界的に見ても徐々にコロナウイルスの影響がコントロールされ始めた可能性を感じられるようになってきた今日この頃ですが(2021年3月26日現在)、この期間の運動不足は個人、そして社会全体に大きな影響を与えたことが予測されます。

まず初めに個人レベルで考えても、運動不足が引き起こす血液循環の低下は、様々な健康被害の原因となります。例えば、高血圧や心臓や脳への負担は、大きな懸念事項となります。

また、運動不足から下肢の筋肉が弱くなっていた場合、歩いたり走ったりすると、体への衝撃を吸収する術が無いため、関節などを痛める危険性も増加します。

本来なら、少しずつウォーキングなどの運動や自宅でできる筋力トレーニングを行いながら徐々に運動機能を回復させていくべきなのですが…今回は、自宅で動かずともできる運動を一つ紹介したく思います。

これは、EMS=Electrical Muscle Stimulationと呼ばれているテクノロジーで、良く知られている形としては、接骨院などで使う電気治療器や電気を流す腹筋トレーニング機器(6パックスなどと言われています)などになります。

EMSは怪我を回復させるの?

最近になって筋肉を鍛える効果に注目が集まっていますが、日本では古くからEMSは、接骨院などで活用されてきました。

例えば、捻挫・骨折・こり・疲労・打撲などから回復するために、電気を流す手法を使っている接骨院はたくさんあります。

基本的に、筋肉の収縮を引き起こすため、血流を増加させ回復を促進すると考えられています。研究によっては、切り傷などからの回復の促進にも活用できるという報告もあります。

気を付けなくてはいけないこととして、急性期や即時効果には適していないということです。例えば、骨折したり、捻挫をした直後に電気を流すことは推奨しない、とする報告もあります。また、切り傷の回復などにおいても、出血中には使えません。筋肉疲労の回復においても、例えばサッカーをやっていて、前半が終わって疲れたので使用して、後半戦では全く疲れが無い!などの効果は期待できません。EMSは、乳酸の除去などに関しては効果が見られなかったとの報告もあります。

EMSは、病気の人にも役立つの?

EMSの良いところは、重病者にとっても活用できる可能性が高いことにあります。というのも、高齢者を含め、体が弱い人が病気や怪我などによって、一定期間入院したり、行動が制限されたりすると、その間に弱ってしまう傾向があります。EMSは、体が動かない状態でも活用できるのが大きなポイントになります。

特に、慢性の心臓病や気管支炎などを持つ患者や、緊急手術を行った後の患者などにとって、EMSを活用したトレーニングが有効であると考えられています。多くの過去研究では、腿や脹脛など、下肢にEMSを活用することで、「下肢筋力の強化」という目的を達成しています。

健康を著しく害している人にとって、体はCatabolicな状況であると考えられます。Catabolicとは、簡単に説明すると、体内の細胞を分解して壊していく作用のことを指します。その逆はAnabolicと言い、体内に必要な細胞を作っていく作用のことです。これらは、両方とも大切で、不要になったものを排除して、新しく必要な物を作っていく必要がありますが、弱ってくると、Catabolicが優位になってしまいます。ある研究によると、EMSは、Anabolicな状態になるように体に刺激を送る可能性があると示唆されています。

EMSの可能性と秘密!

EMSが凄いところは、下肢に活用することで、心肺機能を向上させる可能性があるということです。電気を流すタイミングを、リズミカルにすることで、心臓と同様のポンプ効果を作ることができる可能性があります。一定のリズムで筋肉が収縮を繰り返すことで、血液循環が促進され、全身への酸素供給なども行われるようになったとの報告もあります。

さらに、神経伝達性を向上させる効果があるとも考えられています。特に、Afferent Feedback(求心性フィードバック)という、中枢神経への信号の伝達が速くなることで、反射神経なども促進されることが期待されます。(図2参照) また、神経難病の人達にも効果がある可能性が期待されます。

もう一つ、信じられない可能性が報告されているのですが、これは脚の筋肉にEMSを活用したところ、手首を動かす筋力が強化されたとの報告があることです。面白いことに、肩や前腕を曲げる動きには向上が見られませんでした。つまり、下肢のどこを刺激するかによって、上半身など離れた部分も刺激できる可能性があることが示唆されています。これが、なぜ起こったかについては、詳細な説明はされていませんが、可能性としては以下のことが考えられます。

まず、足つぼなどを考えた場合、足の反射区の一部を押すと対応する臓器に効果があると考えられています。このように、直接の物理刺激無くしても、離れた部分に何かしらの効果を与える可能性はあるかもしれません。また、スポーツなどをしていて、ある部分に物理的な打撲を負ったときに、まるで電気が全身を駆け抜けたような刺激を受けたことのある人は多いかと思いますが、このように体の部分によっては、離れた部分まで作用させる効果がある可能性はあります。

EMSの未来

このように、EMSにはとてつもないポテンシャルがあるように思えます。治療にも使え、筋力増強というトレーニングに加え、心肺機能などにも効果がある可能性があり、間接的な健康促進効果も期待できそうです。

現時点では、副作用の報告はあまりありませんが、原則的に、心臓にペースメーカーをしようしている人は避けた方が良いと考えられています。また、妊娠中も避けた方が良いと言われています。さらに、使用しすぎると筋肉を傷める可能性もあると考えられています。これらについては、そのような危険性があると言われていることもある、程度のことですが、分からない部分は大事をとっておいて、研究が明らかにしていくのを待っておく方が無難だと思います。

副作用に加えて、将来の研究に期待されることは、どの位の強度、頻度、リズムが何に有効かを明らかにすることです。強度は、高ければパワーがつき、低ければ筋持久力がつきます。頻度や一回の時間もパワーや持久力に関係してきます。そして、リズムも非常に重要で、血液循環を促進させるリズム(心拍数との関連性?)、治療効果のあるリズム、トレーニング効果を高めるリズムなど、様々な点を考慮していく必要があります。

私自身、ISEALインソールを開発しましたが、これからEMSなども加えて、治療効果やトレーニング効果を加えたシューズの開発を検討しています!現段階で完成したISEALインソールは、足の使い方を最適化することで、正しい歩き方をサポートして、様々な怪我を予防する効果があります。ISEALインソールは、Most Innovative New Care Product in the Worldという世界的な賞を3年連続した唯一の商品でもあります!

また、健康を含めた科学について、YouTubeにて解説しています。こちらは、ゴンちゃんとミクロちゃんというキャラクターを使って様々な最先端科学をできるだけ分かりやすく、面白く解説しています。ぜひ、ご覧いただけると嬉しいです!

文責:Dr Hanatsu Nagano

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