以前、運動時の水分補給の大切さについてはお話しましたが、それと関連して、暑い時に運動をする危険性について今回はお話していきます。

(以前の水分補給の回でも、お話をした部分ではありますので、ご参照ください。)

運動時の体温の調整方法

運動中は5-10倍ほどエネルギー消費量が高まります。これによって、大量の熱が生成されることになります。この熱をいかにして調整して、体温が上がりすぎないようにするかが、運動と健康において重要になります。体温上昇が体に与える影響は様々な要因によって左右されます。(例:暑さへの順応、水分補給の状態など)(図1参照)

運動で生成された熱によって体温が上昇していったときに、同時に熱を下げる体の機能が働き、一定の体温が維持されることになります。体温の上昇を抑えることができなければ、いずれは命に関わる危険な状態になってしまいます。上昇した体温を元に戻すということにおいては、恒常性維持機能(Homeostasis)が活用されます。

最も重要な体温調整機能は、発汗になります。気温が高く湿度の低い状況下においては、体温調整の85%程度は発汗によるものだと考えられています。これは、汗が蒸発する時に気化熱として熱を奪っていくことで体温調整を行っています。

体表へ血流を増加させることも、体温調整方法として活用されています。運動時、肌に赤らみが出るのは、血液が内蔵から体表近くへ送られることで、外気によって熱を奪おうとする機能が働いているからです。発汗と比べると、体温調整機能としてはやや効果が低いとされています。また、体表に血流が集中することで、体内の血流が低下します。

体温が上昇した際の心臓血管系への影響

少ない血流で体全体の機能を整えるためには、心拍数を上昇させ、より速いペースで血流を回していくことになります。これは、体温調整をするために体表の方に血液を送って、外気と触れ合わせて熱を下げるということ以外にも、運動中の筋肉に血流が必要だということも挙げられます。また、発汗が続くことで、水分不足となり、結果的に血液の量が低下します。そうなると、内臓などに必要な血液のことも考えて、体表へ血液を送る量が相対的に減ることになります。これによって、発汗や外気による体温調整能力が低下することになります。水分補給の回でも説明した通り、脱水状態が危険な理由は、体温調整能力が低下することにもあります。(図2参照)

また、体温調整ができなくなると、筋肉の熱痙攣のリスクが高まります。これは発汗によって、水分と塩分が喪失することが原因であると考えられています。熱疲労も、よくある症状の一つです。吐き気、頭痛、過呼吸などが起こります。水分補給をして休むことが、対策方法となります。熱射病は、命に関わる危険な状態で、直腸の温度が39度を超える状態になります。熱射病においては、体温を下げる術が無く、例えば水風呂などを活用するなど、一刻も早く体温を下げる必要があります。こうした急激な体温低下は体に悪影響を与えることもありますが、命に関わる危険な状態を回避するためには、やむを得ない場合があります。

体温上昇の運動への影響

体温が上昇した場合の運動への影響は、色々な要因によりますが、基本的には酸素供給の低下と疲労しやすさに関連していると報告されています。体温調整のために、内臓や筋肉から体表に向かって血流が送られていくことで、相対的に内臓や筋肉に必要な血液が不足します。これによって、パフォーマンスの低下が生じます。酸素供給が不足していくことで、運動を行う際に有酸素状態を維持するのが難しくなり、無酸素状態が生まれやすくなります。これによって脂肪などの燃料を使うのが難しくなり、ブドウ糖などが主な運動のエネルギー源となりますが、疲労しやすくなる原因の一つだと考えられています。

一方で、無酸素状態の運動、特に短時間で行われる運動(例:ウエイトリフティング・100m走など)においては、最大パワーの減少は報告されていません。体温上昇によって最大パワーには影響が無かった、あるいは最大パワーが若干向上したとの報告もあります。これは、体温上昇によるエネルギー供給の活性化やウォームアップ効果などが影響していると考えられています。しかし、このような良い効果は、短時間限定で考えるべきであり、パフォーマンスを落とさないという観点においても、適度な水分補給は重要です。

体温上昇への対策と順応

体温上昇は、短期的かつ限定的に見れば、無酸素状態のパフォーマンスにおいては、若干の良い効果を与える可能性もありますが、基本的には体温上昇がもたらす効果は、健康被害とパフォーマンスの低下になります。それでは、体温上昇に慣れておくことで、暑さの中での運動パフォーマンスを高め、健康被害を受けづらくすることは可能なのでしょうか?結論から言えば、これは可能で、昔ながらのトレーニング方法として、例えば「敢えて体育館を締め切って暑くして運動をする」などのいかにも精神論っぽい、スポーツ科学に基づいていなさそうなトレーニング方法にも原理的には一定の効果がある可能性はあります。(もちろん、程度にもよりますし、体に負担をかける方法なので高い専門性が必要ですし、特に水分補給に関しては十分な注意が必要で、事故のリスクには細心の注意が必要ですが・・・)

具体的には、暑さ対策のために敢えて気温を上げた中で運動を行うようなトレーニングは、1日1時間を目安となります。そして、こうした暑さ対策のトレーニングを始めると、数日以内に心拍数の上昇の抑制、血流不足の抑制、疲労の抑制などの効果が第一段階として表れます。その後も、継続的にだいたい14日目まで行うことで、発汗率の向上や電解質の喪失の抑制(例:塩分を発汗や利尿により失いにくくなる)が起こることが分かっています。発汗が活発に行われることは、特に湿度の高い環境下において重要です。基本的に、湿度が高いと発汗作用は下がりますが、暑さ対策を行うことで、湿度が高い環境下でも、発汗が行われやすくなり、体温調整をしやすくなります。

運動をせずに暑い環境下に居るだけでも、暑さ対策の効果を得ることは可能です。例えば、サウナなどが良い例となります。しかし、より効果的に体を順応させていくためには、運動を同時に行っておく方が良いことが分かっています。特に、激しい運動を行うことで、この効果は高まりますが、最近の研究では軽度であっても、比較的高い効果が見られたとの報告もあります。

まとめとして、敢えて熱い環境で運動を行うことで、暑い時に運動をした場合、発汗作用の向上や疲労の抑制、熱中症などになりにくくなることが分かっています。これらは1日1時間、14日間行うことで効果が出ると言われています。その際は、暑い環境下に居るだけでも効果はありますが、運動を同時に行うことで、効果が高まると言われています。

最後に、ISEALインソールは、バランスを向上し、疲労しにくくなる効果があります。暑い中、歩いたり走ったりする際には、水分補給などが大切になる一方で、思わぬ怪我のリスクが高まることも分かっています。ぜひISEALインソールをご活用ください。

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文責:Dr Hanatsu Nagano

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