前十字靭帯の断裂は、膝の怪我としてはかなりの重症で、100%機能を回復するのが難しい怪我でもあります。(図1)

怪我を完全に予防することは不可能ですが、膝にかかる衝撃を和らげる工夫をすることで、怪我のリスクを下げることは可能となります。前十字靭帯の断裂は、特にジャンプして着地した時に起こることが多い怪我でもあります。絶対的な衝撃がかかれば、前十字靭帯を断裂する危険は高まります。

それ以外にも、大腿骨・脛骨が過度に捻られるような力が働けば、靭帯が伸びたり、断裂したりする危険性はあります。(図2)

衝撃吸収のバイオメカニクス

前十字靭帯断裂を起こす際には、例えば急な方向転換など、図2の大腿骨と脛骨の捻りが原因になることは多々ありますが、それ以外にも単に衝撃が強すぎて靭帯が耐えられずに断裂することもあります。その場合は、ジャンプで着地した時などにリスクが高まりますが、この衝撃を和らげるにはどのような方法があるのでしょうか?

まず、着地と同時に地面からの衝撃は足に伝わり、その際は足底部や足首に衝撃が伝わります。その後、衝撃は脛骨を伝わり膝関節まで届きます。これらの衝撃をどこか一か所で吸収しようとすると、当然その場所への負担が高まってきて、怪我に繋がるリスクが高まります。

この中で、最初に考えるべきことは足首の動きになります。例えば、大腿四頭筋は衝撃吸収の効果はありますが、これだけを使うと膝にかかる負担が高まる可能性が増えます。よって、まずは足首の動きによって、衝撃をどこまでコントロールできるかが大切になります。

結論から話すと、「足首の底屈による伸張性収縮→受動的な背屈」を行うことが大切になります。(図3)

ジャンプからの着地を含む「着地」は基本的につま先立ちから入ることが多いので、底屈筋を使っています。この脹脛の筋肉を使いつつ、足首を徐々にフラットにしていく過程で、衝撃を吸収することが可能になります。さらに、足がフラットになったと同時に余剰のエネルギーの分散方法として、脛骨を前に回転させていくことが大切になります。これによって、余剰エネルギーをさらに吸収することができます。背屈とは、つま先を上げる動きですが、この場合は、つま先を上げるというよりは、脛骨が前方に回転することで、背屈状態が生まれているため、受動的な背屈と表現されます。

想像しやすい部分ですが、受動的な背屈(つまり脛骨が前方に回転する)が起こると、膝の屈曲も同時に起こりやすくなります。それによって、さらに余剰の衝撃を大腿四頭筋で吸収することが可能になります。

衝撃吸収の流れとしては、足首と膝をこのように使い、各筋肉群の伸張性収縮が役立ちますが、タイミングも重要になります。つまり、最初に底屈筋群にあたる脹脛の筋肉で衝撃を吸収してから足がフラットになった瞬間に前方への受動的な背屈を発動させ、その衝撃を足首や膝にかけることなく、大腿四頭筋の伸張性収縮につないでいく必要があります。

このタイミングを間違えると、結局怪我に繋がるので、この辺りも大切な要素となります。

具体的に何をすると良いの?

それでは、具体的に何をすれば、前十字靭帯断裂のリスクを下げることができるのでしょうか?バイオメカニクスの観点から、簡単にできることのみを以下に列挙してみます。もちろん、これらを行うことで100%リスクを回避できるわけではありませんが、同時に行うことで怪我のリスクを下げることは可能です。前十字靭帯断裂は重症で完治まで時間がかかり、場合によれば完治しないこともあるので、実践してみてください。

  1. 減量をする:体重と着地時の衝撃は高い相関性があります。下肢関節への負担を減らすには、体重を減らすことが重要になります。
  2. 足首の可動域を増加する:上述した底屈筋群の伸張性収縮においても、受動的な背屈においても、足首の可動域が重要になります。意識的に可動域を上げるためのストレッチを行いましょう。
  3. クッション性のある履物:衝撃の絶対量を減らすためには、クッション性のある靴を使用することも重要になります。
  4. 十分な休息を取る:ジョギングやウォーキング、あるいは他のスポーツをたくさんした際には、靭帯に大きな負担がかかっていることも多くなります。無理して続けていると、ある日耐久力が無くなった靭帯が損傷するリスクが生じます。
  5. 食事・睡眠など:靭帯や筋肉などを強化するには、適切な食事と損傷した組織の回復に必要な休息が必要になります。タンパク質は必要になりますが、併せてビタミン(C/Dなど)も必要となります。さらに、適度な睡眠は重要で、成長ホルモンの出る0時~2時には就寝していることが推奨されます。

最後に、膝への衝撃を減らすための足首の使い方をサポートするISEALインソールの活用をジョギング・ウォーキング、その他の運動をする際にはご利用ください。

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文責:Dr Hanatsu Nagano

Fong, C., Blackburn, JT., Norcross, MF., McGrath, M., Padua, DA. 2011. Ankle-dorsiflexion range of motion and landing biomechanics. Journal of Atheletic Training, 46 (1): 5-10.

Andriacchi, TP., Dyrby, CO. 2005. Interactions between kinematics and loading during walking for the normal and ACL deficient knee. Journal of Biomechanics, 38: 293-298.

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