歩行能力は生活において非常に大切ですが、加齢とともに低下していき、最終的には自力で自由に移動をすることが難しくなるケースが多いということは、高齢化が進んでいる日本にとっては大きな問題です。

歩行能力を可能な限り維持しておくことが、健康で高いQOLを維持した人生を送るのに必須なのは言うまでもありません。また、社会保障制度全体を考えた場合でも、シニア層が可能な限り自由に歩いて移動できる方が、医療介護費を減少させることが可能となるわけです。

こうした理由から、シニアの人たちは、歩行能力を向上していくことが様々な面において大切になります。歩行能力というのは、一言で表すのは難しく、様々なデータから総合的に判断するべきものです。さらに言うと、「転びやすいかどうか?」「膝を痛めやすいかどうか?」など、より特定された問題に対しては、ただ単に歩き方を少し見ただけでは正確に判断するのは難しい可能性があります。

こうした大前提は認めたうえで・・・歩行能力の低下を無理やり一言で表せば「歩行速度の低下」と言うことも可能です。もちろん、これは完璧な答えとは程遠いわけですが、特に細かい測定などをせずとも、歩行速度が低下してくれば、歩行能力が低下してきたことが懸念されます。このように、詳細まで正確に検査し、特別な手法を用いてこうした弱点を乗り越えていかないのであれば、大雑把に言えば「速く歩ける能力」を維持し、改善していくことが大切になってきます。

私のような世界的に見てもごく少数のバイオメカニクスマニアを除けば、医師であろうとも、健康科学の専門家であろうとも、「歩行速度」「歩数」などの一般的なデータを基に健康を判断するのが普通です。そのための診断方法としても、6分間歩行(6分間で何メートル歩けるか?)、TUG(椅子に座った状態から立ち上がり3m先の目印まで歩き、折り返しまた椅子に戻って座るまでの時間の計測)など比較的簡易でどこでもできることが利用されがちです。そのため、こうしたデータが多く集まり、ある程度正確に総合的な歩行能力の測定においては、役立つ指標であると考えられています。

そうした中で、具体的にはどのような方法で歩行能力を改善させることができるのでしょうか?

今回は、比較的に簡単にできる方法として「歩行トレーニング」と「筋力トレーニング」の2つに焦点をあて、どのような効果が期待できるかについてお話をします。さらに、ほかにはどのような点を考慮していけば、より効果的なトレーニングになるかについても、考察していきます。

Henderson, RM., Leng, XI., Chmelo, EA., Brinkley, TE., Lyles, MF., Marsh, AP., Nicklas, BJ. 2017. Gait speed response to aerobic versus resistance exercise training in older adults. Aging Clinical and Experimental Research, 29 (5): 969-976.

Brach, JS., VanSwearingen, JM. 2013. Interventions to improve walking in older adults. Current Translational Geriatrics and Experimental Gerontology Reports, 2 (4).

シニア層が歩行能力を改善するために行える運動として、①有酸素運動 と ②筋力トレーニング を比べました。両方とも5カ月間行ったところ、両方の運動において「普通に歩く速度」が上昇しました。有酸素運動においては、早歩きの速度も上昇しました。運動を行う前の健康状態が高い人ほど高い効果が得られました。

有酸素運動について

ここでいう有酸素運動とは、トレッドミル歩行になります。最初は、最大心拍数の50%の心拍数が維持される速度で15分~20分トレッドミル歩行を行い、第6週からは、最大心拍数の65~70%で30分トレッドミル歩行をするようにしました。

筋力トレーニングについて

マシントレーニングを行いました。筋力トレーニングは①レッグプレス、②レッグエクステンション、③シーティド・レッグカール、④シーティド・カーフ、⑤インクライン・プレス、⑥コンパウンド・ロウ、⑦トライセプス・プレス、⑧バイセブス・カールになります。基本的に10回を3セットで、重さは最大値の70%で設定されなした。

まとめ

両方のトレーニングにおいて、約0.2m/sの速度上昇(0.72㎞/h)が見られました。結論としては、トレッドミル歩行の方が早歩きの速度が上昇したために、効果的な可能性があると言われています。

「悪いところを直す」というよりは「特定の動作のトレーニング」が有効

上記の通り、普通にトレーニングをしても歩行能力は上昇する可能性が高いのですが、5カ月間かけて定期的にやる割には、効果が少ないのではないか?という考えもあります。その場合に、悪いところを見つけて、そこを補っていくという考え方というよりは、特定の動作を身に着けることを目的としたトレーニングを行うべきだと言われています。

つまり、大腿四頭筋の筋力が低下しているので大腿四頭筋を強化する、という考え方は有効ですが、必ずしも歩き方のトレーニングをしているわけではないので、特定の動作のトレーニングの方が有効であると考えられています。特に、「タイミング」と「共同作用」を意識したトレーニングが必要だと報告されています。こうした理由からもトレッドミル歩行がひとつ推奨される運動であると言えます。

トレッドミル歩行の利点は、常に歩行速度が一定である上に、同じタイミングでステップをする練習になりやすいので、結果的に歩き方のトレーニングとして効果的である可能性が高いと言えます。さらに、トレッドミル歩行はシニア層にとっては、比較的レベルの高い運動となるため、普段の歩行を楽に行うためにも、こうした難しいトレーニングをしておくことが役立つ可能性があります。トレッドミル歩行については、また別の機会に詳しく説明したく思います。トレッドミル歩行の注意点としては、地上で歩くよりも遅くしないと歩き切るのが大変だということと、ハンドレールを持つ場合は横を持つ方が姿勢が前傾しないので有効な可能性が高いということが挙げられます。

最後に、トレッドミル歩行を行う際に、ISEALインソールの併用もご検討ください。ISEALインソールは、表面に突起があり、その突起をかかと着地からつま先離地までなぞるようにしていけば、自然と正しい足首の使い方をマスターできるように設計されています。トレッドミル歩行で一定の歩き方を身に着けるのであれば、それは正しい歩き方である必要があります。その際に重要になる足首の使い方を簡単に学べるという意味においても、ISEALインソールをご活用ください。

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