怪我をする時っていうのは、十中八九、不慮の事故が原因となります。そして、この不慮の事故ですが、普段と異なった何かしらの要因がある場合が殆どです。例えば、外的要因だと、「突然大きな音がしてビックリした」「急に自転車がぶつかってきた」「すべりやすいところを歩いた」などが挙げられます。

一方で、内的要因においても考えておく必要があります。例えば、「考え事をしていた」「体調が優れなかった」「寝不足だった」など、自身のコンディションが原因で怪我をするリスクもあります。もちろんこうした要因は一つずつ精査していくべきで、可能な限りリスクを下げるようにしておくことが大切です。

その一方で、、、私たちの普段の生活において起こり得る状況をシミュレーションしておくことも大切です。今回は、「急いで歩いて疲れた後に、つまずいて転んでしまうリスクが上がるかどうか?」についてのお話になります。

つまずきは、転倒の最大の原因となるため、どういった状況でリスクが高まるかを理解しておくことは重要です。例えば、こんな時を想定しています。

「バスに乗り遅れそうで、早歩きをして疲れてしまった。」

「電車に乗ろうと、階段を駆け足で登っていき疲れてしまった。」

「待ち合わせの時間に遅れそうで、早歩きをしていて疲れてしまった。」

このように、このシミュレーションは、私たちの日常生活において一般的であり、こうした状況の時にこそリスクが高まっているかどうかを理解しておく必要があります。

今回のお話の題材は、オープンソースでダウンロードが可能です。

この研究は、私が2014年に同僚と行ったものになります。

Nagano, H., James, L., Sparrow, WA., Begg, RK. 2014. Effects of walking-induced fatigue on gait function and tripping risks in older adults. Journal of Neuroengineering and Rehabilitation, 15 (11): 155.

「6分間最大限の速度で歩く」という状況をトレッドミルで行い、その前後で歩き方がどう変わったかを調査したところ、シニアの人たちにとっては、つまずきによる転倒のリスクが上昇したことが分かりました。

歩隔がばらつくことは、左右のバランスが安定していないことを意味する。つま先クリアランスの低下はつまずきによる転倒リスクの上昇を意味する。両方とも、6分間の早歩き後、シニア層に見られた。

これは、歩いている際に、地面からつま先までの距離が、6分間早歩きした後に低下していたことから判断されています。

年齢に関わらず、6分間の早歩きの後に、歩隔がバラついていたことから、左右のバランスも悪くなっていた可能性があります。

つまり、これらの結果から分かることは、「6分間早歩きをして疲れた後は、シニアの人たちはつまずいて転倒をするリスクが高まる可能性がある」ということです。

なので、具体的にどのような策を取るべきか・・・という話においては、以下のようなことが提案できます。

  • 急がないですむようにする。特にシニアの人たちは、時間にゆとりをもったスケジューリングを心掛ける。焦りすぎるくらいなら、乗り物を一本乗り過ごすくらいの気持ちも大切。
  • 急いだ精で疲れた後は、「怪我をするリスクが高い」と常に意識をするようにする。それによって、普段以上に気を付けて歩く。

さらに、ISEALインソールの使用もおススメです。ISEALインソールは、「つまずきのリスクを下げる、左右のバランスを向上する、疲れにくくする」の効果があるので、今回お話した、早歩きをすることで生じるリスクに対して、効果的です。外出する際は、使用をご検討ください。

この研究からのさらなる閃き💡

  • トレッドミルを歩くことについて

トレッドミルは、ジムにあるランニングマシン(ウォーキングマシン)です。自分で歩く速度を決定して、その場を歩くことができます。この実験は、トレッドミルを使って行われました。つまり、歩く速度を途中で下げたりはできませんでした。なので、研究での報告においては、この点を考慮する必要があります。つまり、「早歩きで疲れたら、少しペースダウンする」という可能性は高いわけで、それによりある程度危険回避ができるかもしれません。

そして、トレッドミルを歩くことですが、これはシニアの方にとっては結構大変なことです。例えば、普通の道を時速4㎞で歩けるシニアの人が、トレッドミル上を時速4㎞で歩くことは困難に感じることが多いのが実情です。大雑把に言ってしまうと、トレッドミルを歩くのは普通よりも難しく、歩行能力が低下してくれば、トレッドミル歩行が難しくなります。だからこそ、安全に行うのは大前提としても、トレッドミル歩行は良い歩行トレーニングになる可能性があります。特に、一定のペースで歩き続けることを強いられるので、バラつきのある歩き方をするのが難しくなります。「年を取ると歩き方がバラつく」傾向があるため、トレッドミルは良い歩行トレーニングになると考えられます。さらに、コンクリートを歩くよりも衝撃が弱いため、足首や膝も痛めにくいというメリットもあります。手すり(ハンドレール)を掴むことも可能ですが、できれば横を持つようにしましょう。前を持つと前方に傾いてしまい、普通の歩き方とは異なってしまうので、注意が必要です。

  • エネルギー効率についての考え方

疲れやすいかどうかは、エネルギー効率と大きく関係しています。エネルギー効率が高い動きをしていれば、そう簡単には疲れません。それでは、エネルギー効率とはどのようにして計測することができるのでしょうか?突き詰めていけば同じカロリーでどれだけの動きができるか?という話になっていきます。計測方法は色々とありますが、一つには呼気の二酸化炭素/酸素の割合などから計算していく方法があります。また、歩行においては重心の位置エネルギーと運動エネルギーを計算することで、どのくらいのエネルギー効率で動いているかが分かります。

しかし、最も簡易な方法としてこの研究の中で使用された方法を紹介します。

Physiological Cost Index (PCI)という計算式で以下の式で算出できます。

PCI=(歩いている時の心拍数-安静時の心拍数)÷歩行速度

トレッドミルの中には、心拍数が測定できるものも多いため、安静時の心拍数を知っておけば、PCIを計算することは比較的簡単です。PCIは低い方が、疲れにくい状態であることを意味します。なので、厳密に言うと、エネルギー効率とは異なりますが、PCIが低い状態を保っていれば、疲れにくいと言えます。PCIは「1m進むのにどの位心拍数を打っているか」の指標となります。(速度がm/sで表されていた場合で、通常のトレッドミルではkm/hで表されているので、この解釈は使えません)。この研究からは、通常に歩いている場合は、シニアの人たちの方が3倍ほどPCIが高いことが報告されています。

  • 危険な状況だと疲れやすい?

この研究から分かったこととして、「6分間可能な限り早く歩いてください」という指示に従った結果、若年層はかなり肉体的に疲労した半面、シニア層はそこまで肉体的な疲労を得ていないということです。これらは、PCIや心拍数を見た時に、シニア層は、そこまで限界まで追い込んでいないことが分かるからです。しかしながら、主観的な疲労感を聞いたところ、両年齢層において、同等レベルの疲労感が報告されています。

よって、物理的な疲労を示すデータが無くとも、感覚的には同じくらいの疲労感があったということが示されています。これは、先述した通り、トレッドミルの上を歩いたから という可能性があります。シニアの人たちにとって、トレッドミルを歩くことは容易ではないため、普段以上に気をつかう必要が生じて高い疲労感を得た可能性があります。もしそうであれば、この研究が示した「6分間の早歩きをして疲れた場合、シニア層はつまずいて転ぶリスクが高まる」という結論に加えて、「疲れたと感じたら、リスクが高まる」という仮説も成り立つかもしれません。

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