左の図は、O脚を表し、O脚になると右の図のように、膝の内側に力がかかります。これによって、骨の軟骨が摩耗し、骨同士がぶつかることで微小骨折を起こすことが、変形性膝関節症で痛みを生じる原因となりがちです。
左の図にある、アダクションモーメントという脛骨が外側へ向かおうとする回転モーメントによって、右図のように内側を押す上下の力は生まれます。よって、歩行バイオメカニクスにおいては、膝のアダクションモーメントのピークを下げることが、一つの大きなテーマになります。
マニアックすぎるが、膝の痛みを下げるためのバイオメカニクスについて
右の図の①アダクションモーメントの青い円で囲われている部分は、最初のピークです。この部分は、②のかかと着地後の最大屈曲(青い円)とタイミングが似ています。アダクションモーメントは、ピークを抑えることで、膝に与える影響を少なくすることができると考えられています。かかと着地後に、膝が曲がり始めて、最大限に屈曲した角度が増えると、パワー吸収がより活発になります。③は、パワーを表していて、アダクションモーメントのピークの少し前に、ピークを迎えます。これは、足が地面に着地した衝撃を吸収したことをしまします。黄色で塗られた部分は、マイナス(-)の仕事を表し、大腿四頭筋の伸張性収縮を示します。このような観点から、歩行中の膝への負担を測定することが可能です。
アダクションモーメントと呼ばれていますが、アダクションは本来「中心に近づく」という意味なので、この名前は若干不自然な気はしますが・・。グラフではW形、つまり負の数字で表されることが多く、そう考えるとマイナスのアダクションだから、アブダクション、ということなのだと思います。。。
変形性膝関節症ですが、日本人の場合はO脚型が多く、女性に多く、痛みを自覚していないケースも含めると、約3000万人位の人が患っているようです。先ほど説明したように、バイオメカニクスの観点からは、究極的には左の図に表される赤い力を減らすことが、重要だと考えられます。そのためには、例えば体重を減らすことも効果的です。歩き方で言えば、かかと着地直後の膝のアダクションモーメントを抑えることが大切になります。そのような歩き方をサポートする履物なども活用できます。
膝の置換手術は、痛みを取るには最も効果的な方法ですが、手術による機能ロスが出る危険性も生じます。また、人工関節の摩耗などの問題もあります。軟骨再生も、注目されているテクノロジーです。左の図の骨がぶつかり薄くなった軟骨を再生することで、骨を守ります。様々な理論がありますが(コンドロイチン・グルコサミン・コショウ・キチンキトサン・ビタミンDなどなど)、はっきりとした結果は出ていないのが現状です。しかし、このように「はっきりとはしていない」情報の中には、成功例もあったということが示唆されます。よって、ある程度効果が報告されている物の中には、成功のポテンシャルが隠されている可能性は高いと言えます。情報の信ぴょう性に関しては、「効果がある」という主張が、一定数以上あれば、「何をしても全く可能性が無い」ということは、ある程度否定できます。
膝サポーターの開発
これから私がすることは、膝サポーターの開発です。
衝撃吸収力は、靱帯の弾力性を人工的に再現することで、高めます。また、着地の衝撃が膝に届く前にエネルギー変換(衝撃を他のエネルギーに変えること)することで、膝への衝撃の総量を減らします。また、衝撃を数値化して、AI管理するスマートシステムを取り付けることも考えています。
ご興味のある方は、ご連絡ください。
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