本項では、怪我予防やリハビリなどに関連した歩行バイオメカニクスについてご紹介しております。ほとんどの内容は科学的に証明されたものとなります。内容の一部は、私の理論や見解も含まれています。こちらに記載された歩行バイオメカニクスの内容について、感想・質問・コメントがあればご連絡頂いたうえで、コミュニケーションをとっていけたらと思います。
「歩くこと」は、最も基本的な運動です。私たちは毎日何千歩も歩くので、歩き方は最適化する必要があります。一つのステップがおかしくても、大きな問題にはなりにくいですが、仮に小さな問題であったとしても、良くない歩き方を何カ月、何年間と続けていくと、徐々にですが歩行に問題が生じてくる可能性が高まります。もし本項が研究者や医療従事者、靴製造者、ヘルスケアの専門家などの方達に役立つことがあれば幸いです。
①ISEALインソールについて
1. つまずきによる転倒の予防
つまずきは、転倒の最大の原因です。つまずきによる転倒は、ほとんどの場合、前方に起こります。つまずきの定義は、「遊脚期中の足が地面、あるいは地面上の障害物に接触すること」ですが、バランスに影響を与えるインパクトが生じた場合のみを指すのが通例です。(落ちてきた葉っぱに足が当たっても、つまずきとは言わない)
遊脚期の半ばで、足のつまさきと地面からの距離が最も小さくなる地点において、前方への足の速度が最大に近づきます。この地点をミニマム・フット・クリアランス(MFC)と言い、MFCでつまずくと、大きな衝撃が生まれやすいため、前方へバランスを失いやすくなります。また、MFC付近では、両足が揃っていることが多いため、支持基底面(BoS)の前方境界線と重心の距離が短くなり、バランスを失った際にバランスを回復するのが困難となります。
MFCの高さを上げるためには、足首の背屈がカギとなり、これは前脛骨筋などのDorsiflexorと呼ばれる筋肉群によってコントロールされています。ISEALインソールは、背屈を向上させ、MFCで足の高さを高める機能があることが、3D歩行動作解析の結果より証明されています。
利き足のMFCの方が、反利き足よりも低くなる傾向があるため、より高いつまずきのリスクがある可能性があります。靴の中には、平面に置いた際につまさきが地面から上がっているように設計されているものも多くありますが、これもMFCを上げる効果が期待できます。「足を強く蹴り出すことで、遊脚期中の足の高さを維持しよう」という考え方は、過度に足圧を高める危険性があり、特に糖尿病患者などにおいては、推奨できません。
2. ダイナミックバランスの向上
ダイナミックバランスとは、「支持基底面(BoS)」の境界線と外挿法によって推定された重心(extrapolated centre of mass=XCoM)の距離によって求められます。
BoSは、片足が立脚状態の場合は、立脚中の足の接地面積、両脚とも立脚中の場合は、両脚の接地面積とその間の面積を指します。しかし、片脚立脚期であっても、横断面における両足間の面積は架空のBoSと考えることができます。片足立脚中においては、XCoMが架空のBoSの外側にある場合に「危険な」バランスロスであると仮定できます。片足立脚期中、横断面において立脚中の足の接地面積(BoS)の外側にXCoMがあるものの、架空のBoSの内側に位置されていた場合は、「機能的なバランスロス」と考えることができます。前方へ進むために歩行する場合、バランスを前方へ失い、遊脚中の脚を安全に着地することでバランスを回復する、という工程を繰り返していると表現することもできるため、歩行に必要なバランスロスを機能的なバランスロスとし、転倒に繋がるバランスロスとは区別して考える必要があります。
体の重心(CoM)とは、全ての体のパーツの位置の平均を点で表した場所となります。もしCoMがBoSの中にあった場合でも、体が動いている場合は、それだけではバランスが良いとは言い切れません。というのも、CoMは一定の速度で動いているため、その速度も考慮してバランスを考えなくてはならないため、XCoMが使われます。歩行バイオメカニクスにおいては、XCoMがBoSの中にあることが、「安全なバランス」と定義されます。BoSとXCoMの距離(CoMの横断面の速度=方向を考慮した上での距離)を「安定のマージン」(Margin of Stability=MoS)と言います。
MoSは、速度を考慮したバランスのパラメーターであるため、当然CoMの動きの方向を考慮する必要があります。例えば、前方へバランスを失っている際には、前方のBoSの境界線とXCoMの距離を測定するべきです。そして、MoSを増加させることが、バランスを良くすることと言えます。
しかし、例えば歩行中に危険なバランスロス、つまりXCoMが架空のBoSの外に出るようなことは滅多にありません。つまり、複数歩行サイクルの平均値としてMoSを考えるだけでは、そうしたレアなケースを考慮するのは難しくなります。よって、複数歩行サイクルの変動性(最もシンプルなものは標準偏差)であったり、百分位数における計算(例:5%の百分位数であれば、一日1万歩歩いたうちに500歩目に小さなMoS)などを算出することで、普段起こりにくいバランスロスの可能性をより正確に判断できる可能性があります。
CoMの動きは、体のどの部分を動かしても影響を与えますが、普通に歩行している場合において、足圧の中心(CoP)が一つの重要な要素となります。側方へのバランスに関しては、極度に外側へCoPが移動することで、バランスへ悪影響を与えます。上述した理論と同じで、平均値などの中心傾向に加えて、標準偏差などの変動性を用いてCoPを考えるべきです。ISEALインソールは、突起を活用して、理想的なCoPの動きを導いています。突起は求心性のフィードバックを促進し、反応速度を高めます。求心性のフィードバックとは、足の裏で受けた刺激が中枢神経系に伝わることを指します。
3. 歩行の効率性向上
歩行において、より高いエネルギー効率は「オートマティックな前方への移動」、つまり随意的な筋収縮によってエネルギーを生み出す必要が少ない歩行パターンを指します。立脚期において、足が地面に着地する際にメカニカル・エネルギーが生じます。もしこのエネルギーを弾性エネルギーやバネの中に吸収することができれば、歩行者は、衝撃を感じにくくなります。諸説ありますが、例えばアキレス腱にはこうした作用があると考えられているため、かかと着地時に背屈を行うことで、このメカニズムを最大限まで活用できると考えることも可能です。
これは歩行においては不可能とされていますが、もし仮に足が着地した際の衝撃をエネルギーとして一時的に吸収し、つま先離地の時の蹴り出し時にそのエネルギーを全て再利用することができれば、エネルギー効率は100%となり、歩行時に衝撃は全く感じなくなり、足を意識的に蹴り出す必要も全くなくなります。このエネルギー効率を%で表す数式をRecovery Rateと言い、通常60-70%程度であると考えられています。高いエネルギー効率は、疲れにくい・筋肉疲労を起こしにくいなどに加えて、衝撃を感じにくくなるため、他の脚の関節などにかかる負担を軽減することができます。
Recovery rate (%) =100∗[ΔKE+ΔPE−Δ(KE+PE)]/(ΔKE+ΔPE)
4. 衝撃吸収
足が地面に着地した際に生じた衝撃のうち、つま先離地に活用されなかったエネルギーは、足や膝関節などに衝撃として伝わります。初期立脚期において、より多くのエネルギーを吸収することは、他の脚関節に伝わる衝撃が少なることを意味します。衝撃吸収素材をかかと部分に活用することは、効果的かつ一般的な方法です。しかし、この方法で衝撃を吸収した場合、立脚期後期に伝わるメカニカル・エネルギーが減少するため、つま先離地のためにより自発的に地面を蹴り出す必要が生じる可能性があります。自発的に地面を蹴り出すことで、足圧が上昇し、壊死に繋がる原因となりかねません。個々の足の状態や歩行パターンによるため、十分な注意が必要ですが、反発性の低い素材をかかと部分に使用し、高反発性のものをつま先部分に使用する事で、エネルギー効率を高めることのできる可能性が高まります。ただし、高反発の素材を使用する際は、壊死に繋がりやすい足のエリアに圧力が集中しないように注意が必要です。
5. 変形性膝関節炎
変形性膝関節炎は、微小骨折により強い痛みを感じることの多い、比較的起こりやすい膝のコンディションの1つです。適切な大腿骨と脛骨のアライメントは、膝関節にかかるストレスを軽減させることができます。一方で、アライメントが崩れると、O脚型(あるいはより少ない頻度でX脚型)の変形が加速することとなります。バイオメカニクスの観点から、膝のアダクションモーメントが膝内側の関節炎に関連しています。
床反力に合わせて脛骨のアライメントを矯正すればモーメントアームが減少するため、膝のアダクションモーメントの削減が可能となります。ラテラル・ウェッジ・インソールなどにより足首のエバーションをサポートすることで、脛骨の過度な外転を防ぎ、モーメントアームを減少させることが可能です。初期の立脚期において脛骨のアライメントを矯正することで、膝のアダクションモーメントのピークを減らすことが可能です。ISEALインソールは、後部に傾斜を加え、脛骨の外反を避けるように設計されています。もし過度なX脚と診断された場合、ISEALインソールは、適さない可能性があるので、気になる場合は使用前に整形外科にて診察を受けることをお勧めいたします。今後、過度なX脚用のインソールも開発する予定です。
立脚期において、初期のプロネーションから後期のスピネーションは、自然な足首の動きと考えられていて、エネルギー効率の高い立脚を可能とし、こうした足首の動きは、足圧の中心(CoP)の動きに反映されます。側方へCoPが移動するのはスピネーションを反映していますが、過度なCoPの移動は、足首のインバーションに繋がるため、モーメントアームとそれに関連した膝のアダクションモーメントの増加に繋がります。
科学的根拠と言う観点においては、未だに議論されている部分ではありますが、衝撃吸収素材をかかと部分に使用することで膝にかかる負担を軽減することができると考えられます。一説によると、軟骨や骨の再生は、適度な振動などの衝撃などによって促進されることが報告されていますが、かかと着地時の衝撃を軽減することがこうしたプロセスに悪影響を与える可能性は低いと予想されます。
2. 健康な歩行
歩行パターンには、様々な健康の情報が含まれていて、歩行の健康度にはある一定の共通した傾向が見られます。歩行の健康が損なわれた場合、まず最初に歩幅が減少し、それに伴った歩行速度も減少します。歩隔は増加し、両足立脚時間も長くなります。複数の歩行サイクルにおける歩行パターンの一貫性は損なわれ、両脚の使い方に差が出ます。加齢を始めとした様々な歩行能力低下を引き起こす要因(例:怪我・病気 など)において、一般的にこうした傾向が見られがちです。
加齢による歩行への影響
上述した通り、高齢者は歩幅を減少し、両足立脚時間が長くなる傾向があります。また、歩隔が増加し、若年層と比較すると、毎歩行サイクルの変動性が増加します。両脚間の動きにも、より大きな差異が見られるようになります。加齢による影響は、高齢層により顕著に見られるconditionにおける二次的な影響であると考えられています。加齢とともに、筋力が減少したり、パーキンソン症状が現れたり、関節炎の症状が出たり、より多くの薬を飲むことになりがちなので薬剤の影響などがより見られやすくなります。転倒は、高齢者にとって健康を損なう危険性のある重要な問題ですが、加齢による歩行への良くない変化が原因の1つと言えます。
1. 基本歩行データ(satio-temporal parameters)
踵とつま先の位置と時間情報のみで定義される歩行データを、基本歩行データ(spatio-temporal parameters)と言います。踵着地は、上昇中の床反力の垂直方向要素がある一定の基準値を超えた段階で(ノイズと区別するため)定義します。「歩行サイクルにおいて、最も低い踵の位置」や「垂直方向においてマイナスの踵の速度(下降)が0になった瞬間」なども、キネマティクスの観点からの定義として使うことも可能です。水平方向の速度や加速度を用いた、かかと着地の定義も使われることがあります。
つま先離地は、定義上「つま先が地面を離れた瞬間、遊脚期の始まり」となります。同様に、床反力あるいはキネマティクスに基づいた定義によりつま先離地は特定できます。
歩幅と歩隔は、それぞれ前後と左右の踵着地時の踵間の距離と定義できます。両足立脚時間は、両脚が地面に接触している時間、つまり踵着地から反対脚のつま先離地までと定義されます。他の基本歩行データの例として、ストライド(二歩)に基づいた定義、すなわち歩幅の代わりにストライドの距離などが挙げられます。しかし、ステップサイクルで分析をした方が、より詳細な分析が可能となります。特に、両脚間の差異を見る場合、ステップサイクルを分析する必要があります。ステップ時間や立脚時間、片足立脚時間(遊脚期の時間と同じだが、立脚中の脚を中心に考えている)も時間に基づいたデータ(temporal parameters)として用いられることもあります。ステップの速度は、基本歩行データの中でも、より多くの注目に値する面白いデータです。つま先離地から踵着地までの平均とピークの水平方向の遊脚中の脚の速度が測定できます。
基本歩行データの定義上は、「つま先‐踵の角度」もあまり注目されていませんが、重要な意味を持っている可能性があります。私の仮説では、「つま先‐踵の角度」は関節炎に関連している可能性があると考えています。例えば膝の内側が痛ければ、つま先を外側へ向ける(がに股)ことで、踵着地後に膝の内側が圧迫されないようになる可能性があります。
2. 変動性
歩行の変動性は、歩行パターンが一貫していないことを意味します。バイオメカニクスにおいて、歩行データを複数歩行サイクル分計測し、標準偏差や他の手法を用いて、歩行サイクルの非一貫性を表します。これは、歩行能力の低下を表し、例えばMFCの変動性の増加は、つまずきのリスクの増加に繋がります。トレッドミル上での歩行は、一定の歩行パターンを得るのに役立ちます。トレッドミル上での歩行では、歩行速度の変動性が最小化されるため、それに伴う歩幅や歩隔そして他のタイミングデータの変動性も下がる傾向にあります。メトロノームを用いて一定のリズムでステップを取っていく方法も、歩行の変動性を下げるトレーニングのアイデアとして挙げられます。特に、タイミングデータの変動性が下がるため、それに伴い他の歩行の変動性が下がることが期待されます。
パーキンソン症状などの状態は、歩行の変動性を増加させる傾向にあります。エネルギー効率の観点からも、高い変動性はより多くのエネルギーを必要とします。その理由は、最もエネルギー効率の良い歩行パターンとは、最もエネルギー効率の良い歩行サイクルを忠実に繰り返すことだからです。歩行の変動性は、バランスや転倒リスクの指標としても考えられることがあります。
3. 両脚間の非均一性
非均一性は、歩行パターンの左右間のつり合いを失うことで起こります。この不均衡は「筋力、関節の可動域、痛み、利き脚」などの要素によっておこります。一般的に言えば、歩行の非均一性は、改善されるべきです。例えば、トレーニングのプログラムは、非均一性を減少させるように考案すると効果的です。片脚の歩幅が、反対の脚よりも長ければ、短い方の脚のトレーニングをより強調することで、非均一性の解消に繋がる可能性が高まります。非均一性における一つの理論として「機能的非均一性(Functional Asymmetry)」というものがあります。この理論は、「利き脚の歩幅は反利き脚より長くなり、反利き脚は体の安定に使われる」というものです。反利き脚の役割とされる「体の安定」は、バイオメカニクスにおいては「より長い両足立脚時間、より大きなBoS」などが挙げられます。私の理論では、機能的非均一性によって表される歩行パターンは、歩行環境が難しければ起こりやすいと考えています。これは、高齢者がトレッドミル上を歩行したりする際にこうした傾向が顕著に見られることから想定されています。加齢も、歩行の非均一性を引き起こす要因の1つであると考えられますが、これらは、加齢による筋力の非均一性などの二次的な結果であると考えることができます。
転倒のリスク
1. つまずき
約半数の転倒は、つまずきが原因であると考えられています。つまずきは、「遊脚期中の足が、地面や地面に置かれた障害物と予期せぬ接触を起こし、その衝撃がダイナミックバランスに影響を与える位の強さを持っていること」と定義されます。遊脚期中の足の速度が最も高いのは、遊脚期の中ほどであり、この辺りでつまずきが起こると足が引き起こすインパクトは最大になります。遊脚期中の足が最大速度で動いている辺りで、最も地面とつま先の距離が短くなる地点をMinimum Foot Clearance(MFC)と言い、MFCを高めるような歩行矯正が、つまずきによる転倒のリスクを下げることに繋がります。足首の背屈は、MFCを高めるのに有効な動きであることが分かっています。つま先部分が垂直方向に若干上がっているような履物も、(若干)MFCを高める効果が期待できます。前脛骨筋のトレーニングなども、MFCの増加に役立ちます。
2. スリップ(すべり)
バイオメカニクスにおいて、スリップとは「足が着地した際に生じる水平方向の床反力」が「靴のアウトソールと地面の間がもたらし得る最大摩擦力」(available friction force)を超えた際に生じる力がもたらす加速度(F = m.a)が原因です。これをさらに細かく考察していくと「滑りやすさ」を表す摩擦係数(coefficient of friction=CoF)が、必要摩擦係数(required coefficient of friction=RCoF)が高ければ、滑ることはありません。必要摩擦係数は、以下の数式によって求められるため、床反力がその決定要因となっていることが分かります。
RCoF=(horizontal ground reaction force)⁄(vertical ground reaction force)
この数式は、垂直方向の床反力を強めて、水平方向の床反力を弱めるような足の着地の仕方が滑りによる事故を減らすのに有効であることを意味します。もし足を地面に向かって真っすぐ下に強く踏みつけていけば、RCoFは減少します。このような「踏みつけ」的な歩き方は、膝や他の脚関節などに悪影響を与える危険性が高いため、推奨されるものではありません。緊急回避的な状況を除いては、滑りを予防するために、踏みつけの歩き方をすることは避けるべきです。 また、最近ではRCoFではなく、水平方向の床反力のみを考慮する傾向もあります。この新しい考え方にもとづけば、垂直方向の床反力を高める意味はなく、強く踏みつける必要はなくなります。
3. ダイナミックバランス
ダイナミックバランスは、CoMとBoSの関係によって決まります。既に上述した通り、XCoMがBoSの中に入っている際のMoSが、バランスの指標となります。バランスロスの方向は、BoSのどの境界線にCoMが向かっているかによって予想できます。ダイナミックバランスのコントロールは、CoMとBoSのコントロールによって決まります。
4. バランス回復
XCoMをBoSの中に入れることが、バイオメカニクスにおけるバランス回復の定義となります。
伸張性の仕事(Eccentric Work=エクセントリックワーク)
筋肉のエクセントリックワークは、パワーの吸収に貢献し、バランス回復に役立ちます。一つの例として、(ある程度)高いところから飛び降りた時のことを想像してみてください。着地時に、膝はある程度伸びていて、着地と同時に膝が曲がり始めることで、着地時の衝撃を、一定の時間に分散させることが可能です。大腿四頭筋(膝の伸展の役割を果たす)は、着地のメカニズムに必要ですが、実際には膝は曲がります。この現象を、エクセントリックワークと言い、衝撃吸収や負荷の分散に使われます。
ISEALインソールは、踵着地時に背屈をサポートするように設計されています。これにより、前脛骨筋などの背屈をサポートする筋肉のエクセントリックワークを向上させる狙いがあります。踵着地から足がフラットになるまでの時間を増加することで、衝撃を長時間に分散させることができます。
バランス回復時間(Available Response Time=ART)
時間をベースに考えたバランス測定方法の1つとして、ARTが挙げられます。ARTは、CoMとBoSの距離と速度を基に、どの位の時間でバランスロスが開始するかを表します。人の歩行は、矢状面における逆振り子運動として例えられるため、CoMは直線ではなく、アーチのような軌跡を描きます。
ARTの計算においては、直線的な速度の使用が可能かもしれない。その理由の一つとしては、例えばつまずきなどが起こった時に、重心の動きが角運動から線運動に変換される可能性があるということである。
また、ARTは、通常非常に短時間であることが想定されるため、角運動と線運動の両方を想定した際に生じる誤差は、実際のバランスロスなどに関してはほとんど重要な意味を持たないかもしれない。線運動でARTを計算した場合、横断面で考慮する必要がある。
バイオメカニクスの観点からバランスを考慮する際に、最新のコンセプトにおいても前方-後方/側方を別々に測定するというエラーが生じている。これは、バランスを前額面や矢状面で分析するという根本的な問題に起因する。これでは、CoMが実際にどちらへ動いているかを判断するのが難しく、BoSの形も正確に描写することができない。私自身は、この重要性を学術誌において紹介したが、こうした包括的なバランスの考え方をスタンダードにする必要がある。
横断面でバランスを考える際には、CoMの高さが分からないという問題は生じるが、現状高さを考慮したバランスの定義は無い。つまり、CoMがあまり低くなりすぎると、BoSの中にCoM(あるいはXCoM)を維持していても、脚力によってCoMの位置を維持したり高めたりするのが難しくなる。こうした高さも考慮したバランスの定義は、今後の研究課題である。
安定の余地(Margin of Stability=MoS)
空間的な観点からバランスを定義する場合は、MoSを用いることができます。先述した通り、MoSは、CoMといずれかのBoSの境界線までの距離となります。しかし、正確にバランスを考えるためには、XCoM(extrapolated centre of mass)をCoMのために使用する必要があります。XCoMは、位置と速度を人の歩行パターンを考慮しているため、CoMよりも正確に動的バランスを表すことができると考えられています。
XCoM=CoM+CoMvel/√(g⁄l)
インソールの効果を、早く体感したく思いました。
歩く事が、大好きな私。快適な歩行生活したく思いました。
複雑なお話を読んでいただきありがとうございます(笑)!
インソールを体感していただけたら、とても嬉しいです!